たまごビル健康講座                       平成28年5月14日


     東日本大震災チャリティーたまご会

   家族の信頼を土台に自分の「いのち」は自分で守る!
      
群馬大学理工学研究院 教授
      
群馬大学広域首都圏防災研究センター長
           片 田 敏 孝 先生

【司会 四方 伸明先生】
       
泉大津市立病院
         副院長     
 四方 伸明 先生

最初に、熊本地震の犠牲者の方々に黙とうを行いました。

たまごビルが行っている、熊本の避難者のための
“エコノミー症候群を予防する方法”をユーチューブで公開している
ことを報告しました。


 
       


YouTube で “tamagobl”で検索するとすぐ出てきます。

被災者だけでなく、どなたにも良い体操です。ご覧ください。

四方先生は東日本大地震後の福島県を訪問しました。
仙台市の閖上(ゆりあげ)浜では、「津波は三陸では起こるが、こちらでは起こらない」
という誤った言い伝えがあり、ゆりあげ浜では逃げなかったため大勢の方が犠牲になりました。
 

福島の震災では、関連死が非常に多いのです。震災後仮設住宅に入った高齢者が病死や、
エコノミー症候群で死亡するという関連死が多くありました。
熊本でもこれから発生してくる可能性があります。

【片 田 敏 孝 先生】

私は防災の専門家ですが、災害時毎回毎回同じ事が言われていて、エコノミー症候群の話も、今回もまた言われている状態です。命を守るということが防災上出来ていない、またも教訓が生かされない状況です。

どうしてなんだろうかと考えました。

「人は自分の命に向かえ合えない」という人間の性の様なものがあります。
自分は大丈夫だろうと思いがちであり、自分に限ってそんなことが起こる筈がないと考えてしまいます。

 
人間は災害が起こったとき、自分の命ではなく、自分の大事な人の事を考えがちなのです。
自分の命は自分で守るということが大切なのですが、人はなかなか、大切な人を思って、
助けに行って、犠牲になります。それが人間であり、絆であり、人とは崇高なものです。
それを踏まえて命を考え、防災を考えなければなりません。

たまごビルの健康法に関しても、多くの共通点があります。
健康でも、おなじです。他人のことは分かるのですが、自分の体の事は見ようとしないのです。
分かっていても対処しないのが人間なのです。率先して実行しなければなりません。
石垣院長は、自分のからだを見つめること、命を見つめ、自分がどう行動していくかを大切にしています。
自分の命は自分で守っていくということは共通した考えです。
    
多発する自然災害について考えます。

         

阪神淡路大震災から、地震や火山の地象が多く、また、温暖化の影響で台風などの気象災害が多く発生しています。
しかし気象災害である台風は毎年起こるものであり、温暖化の影響で巨大化しています。
日本を毎年巨大台風が襲うことが確実に予想されています。注意が必要です。

一方、地象(地震・火山)も多く発生しています。
熊本では巨大な地震が2回連続して起こりました。今までは、こんなことは起こらなかったので予測できなかったのです。
多くの断層があり、地震で断層が連動したのです。
このまま、四国まで連動して地震が発生すると、南海トラフの地震が発生することが考えられます。

        
人間はわが身に起こるリスクに対応できない

津波が来ると警報が出ても、逃げないで多くの人が死んでいます。なぜ逃げないのでしょうか。
なぜ、人は逃げられないのか。人間には「自分の命にはまともに向き合えない」心理学的特徴があります。
それを「正常化の偏見」と言います。自分だけは大丈夫という考え方です。
もし地震が来た時のことを想像しますと、地震直後は机の下へ逃げ、10分後は外へ逃げ、
1時間後はがれきの下の人を救助していると想像します。
しかし、ここで自分ががれきの下で死んでいる想像はしないのです。
これが「正常化の偏見」です。自分だけは大丈夫という考え方です。

人間は必ず死にます。しかし、人はそんなことは考えず平気で生きています。
病気で余命宣告され、死ぬまでの時間がわかると、人間は落ちつけません。
しかし、明日死ぬかも分からないのに、人は平気で生きています。それが人間としての性なのです。

火災報知器がなっても逃げない、「火事ならだれかが火事と叫んでいるはずだ」と一回目は無視します。
これは、「よし逃げようと決心できていない」集団なのです。本当に火事なら丸こげです。何もできないのです。

一番最初に逃げる勇気が必要。率先避難者。

周りは皆逃げません。しかし、人間はちゃんと災害に向きあえないことを理解し、周りはどうあっても
勇気をもって自分は対応することが大切です。率先して避難することが大切です。
一人が勇気をもって避難すれば、周りの人たちも非難します。人を助けることになります。

2011年東日本大震災 あれから5年経ちました。

  死者:19,335人 行方不明: 2,600人  計:21,935人の犠牲が出ています。


日本は地震の被害を受け続けています。しかし、子供たちは逃げようと考えません。
       
 
  大人が逃げないので、子供も逃げる考えがありません。
  これを見直す必要があります。過去には多くの災害が起こっているのです。
      

  釜石には津波の碑が34基もあります。先人の思い、教訓が生かせなかった悔しさの碑です。
 
      

      石碑を残した先人に思いを馳せることから色々な教訓を得ることが出来ます。
       

     学生たちが先人の思いを知り、地域に伝える運動を始めました。
     防災はすぐに忘れ去られます。防災意識を風化させることが大切なのです。

      

     風化とは被災経験を忘れるのではなく、意識しなくても誰もが防災意識を持つように、定着させることです。

     釜石では子供たちが最善を尽くしてくれました。
     ハザードマップの外にあった、3階建ての小学校の校舎の屋上に居た小学生を、中学生が声をかけて
     一緒に高台へ走り助かりました。

     
  

    おじいさんおばあさんが逃げました。おじいさんおばあさんが逃げないと子供が助けに来て死んでしまうとの思いです。
    普段から中学生が迎えに来て、訓練していました。最初は、おじいさんおばあさんはあきらめていて「逃げない」と
    言いました。しかし中学生が「おじいさんおばあさんが死んだらいやだ」と言って迎えに行くと言いました。
    自分が逃げないと子供が助けに来て死んでしまう。おじいさんおばあさんが逃げたのです。

         


        子供たちが「率先避難者」となって助かり、助けたのです。
        今後は大人たちも教育することが大切です。


   

【質疑応答】

   大阪は大丈夫、熊本は大丈夫と言われていたところで大地震がおこりました。
 
   人間の時間スケールと自然の時間スケールが違う。自然は300年400年 1000年。
   安全神話はない。どこにでも災害は起こります。自然のスケールを理解し、何があっても不思議はないと
   知ることです。冷静に備えるべきです。しかし、おびえて不幸に暮らすべきではない。


    

      片田先生の講演に感謝の花束を贈呈しました。