心臓病の治療と予防 関西医科大学 枚方病院 前院長 今村 洋二 先生 |
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【解説】 関西医科大学 病理部教授 四方 伸明 先生 今村先生は日比谷高校から慶応義塾大学に進まれ 医学部・胸部外科で活躍されました。 有名人の治療も多く行われ、石原裕次郎が慶応大学病院で 心臓の手術をした時の主治医が今村先生です。 関西医科大学に来ていただいて、初代の病院長として 枚方病院を立ち上げられました。 |
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【今村 洋二 先生】 今村先生は東京千代田区神田に生まれた江戸っ子です。 母の教えで慶應義塾大学医学部入学、外科医になられました。アメリカへも留学して学びました。 |
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慶応大学病院で石原裕次郎の心臓手術を行いました。 |
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平成2年の2月に関西医科大学への話が有り、大阪に来られました。それから、単身赴任で25年になります。 |
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関西医科大学の滝井病院へ入り、大学の改革を行っていました。その実績が認められ、枚方病院建設を担当されました。 病院を建てるということは、建物を建てればよいのではなく、人を育てることが大切と考えています。 患者側の尺度から評価され満足させられる医療を行います。まず医師の意識改革が必要でした。 患者さんの意思を大切にして、病院はサービス業であることを徹底しています。 |
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週刊ダイヤモンド誌で、「頼れる病院」2年連続大阪で第一位に選ばれました。 現在院長している病院ではお年寄りが毎日リハビリに130~150人こられます。最先端も重要ですが、これが、医療の原点です。病に悩んでいる人を、いかに社会復帰してもらうかを考えなければいけないのです。 |
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心臓の話 心臓は袋に入っていて、袋には潤滑油のような物が入っています。 この袋の中に、水が溜まったり出血したりすると、心タンポナーデと言う心臓の動きが悪くなる状態になります。 肺の役割 全身に酸素や栄養を供給して戻ってきた静脈血は、肺で酸素を含んだ動脈血になって全身に送られます。 肺は自分では動けない臓器です。横隔膜や他の肋間筋が動いて肺が膨らんだりしぼんだりして呼吸をします。 横隔膜やお腹が充分動かないと肺が動かないのです。充分な動脈血が得られなくなります。 肺は健康な時はスポンジに少し水を含んだような状態に例えられます。病気になると水浸しのような状態になります。そうなると呼吸困難や喀血を起こします。 |
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心臓の構造 心臓は左右に分かれています。 右側は帰ってくる静脈血を受け入れ、肺に送り出します。 左側は、肺で酸素を含んだ動脈血を受け入れ、全身に送り出します。 冠動脈 心臓の筋肉に血液を送っているのは心臓のまわりに有る冠状動脈だけです。冠状動脈が詰まると、心臓の筋肉に血液が行かなくなり、心筋梗塞を起こします。 心筋梗塞を防ぎ、冠状動脈を温存する為には、生活習慣を改善しなければなりません。食事と運動が大切で、心筋梗塞の予防になります。 |
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心臓の病気の本質とは何か 血液の循環 |
静脈血 ⇒ (右心房) ⇒ (右心室)⇒ 肺へ送る 肺からの動脈血 ⇒ (左心房) ⇒ (左心室) ⇒ 全身へ送られる 身体に酸素や栄養を供給して戻ってきた静脈血が右心房に入り、弁を通って右心室に吸い込まれ、弁が閉じられ、右心室が収縮する事で肺に送りだされます。肺で酸素を含んだ動脈血になって左心房に入り、弁を通って左心室に入り、左心室が収縮する事で、動脈血が全身に送り出されます。動脈血は、脳や他の臓器、体に送られ、酸素や栄養素を代謝し静脈血となって右心房に戻ってきます。これが血液循環です。 身体の末梢では毛細血管の所で血液がゆっくり流れ、酸素や栄養素を代謝(物々交換)します。 |
心臓病とは 循環が悪くなって血液の流れがよどむのが、心臓病の本体です。 右心室の病気 右心室の収縮が悪くなると、静脈血が肺に行かず、右心房にうっ滞します。静脈血が溜まってしまうため肝臓が膨れ、下大静脈などが膨れ、足が膨れます。頭の方にも静脈血が溜まりうっ血します。これがむくみの原因です。静脈の血液が沢山溜まっていることをむくみと言います。写真は静脈血が溜まり脚が太く膨れた例です。 |
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左心室の病気 左心室が悪くなると、左心室から全身に血液を送っていますので、動脈血を全身に送られなくなります。充分な酸素を供給できなくなります。左心室が悪くなると、一気に症状が悪くなります。左心室が悪くなると、肺から左心房へ血液が流れず、肺の血液がうっ血し、肺に血液がたまり、呼吸が苦しくなります。 |
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○夜間頻尿の原因。 心臓が弱ってきて循環が悪いと、重力で血液が足の方にたまっています。寝ると重力がかからなくなり、血液が心臓に戻ってきて代謝がおこります。寝てから3~4時間でおしっこにいき、熟睡できません。心臓の力が弱っていると起こります。 ○締め付けられるような胸痛発作は狭心症の一歩手前。 ○時々意識が無くなるのは脳に血液が行かないためです。 |
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○適当な運動 140-(年齢の半分)の脈拍数の運動を30分行う。 (例)60歳なら、140 - (60/2) =110 心拍数110ぐらいになる運動を30分行う。 その後、できる限り、立って生活する。 ○食事内容の改善 和食が見直されています。 脂肪の少ない物 青魚、豆類(大豆 豆腐 納豆) 野菜を多く食べる、ドレッシングはオリーブオイル系 お酒は適量なら身体によい 日本酒 1合、ワインはグラス2杯、ビール500cc 週に1回休肝日をとる 米飯を主にした一汁三菜を心がける。 減塩 6グラム以下に抑える。 ○良好な睡眠。 ○ストレスの解消 化粧や創作活動を行う。 ○口腔ケア 感染症や誤嚥性肺炎の原因。 3か月に1回歯垢を取る。 |
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強心薬 β遮断薬 血管拡張薬 |
心不全の治療には、強心剤と、利尿剤が多く使われます。 強心薬は心臓を強く動かすことで、心拍数を減らします。しかし、心臓に無理をかけるので、注意が必要です。利尿薬は、水分を排出し、むくみをとり、血圧を下げるため、心不全の治療にも使われます。 β遮断薬は心臓を弱く動かして血圧を下げます。 血管拡張薬は、血管を広げる事で血液の流通を良くし、血圧を下げます。 しかし、くすりは副作用が多く、出来るだけ飲まない方が良い。 くすりを使うより、生活習慣を改善し、安静、禁煙、減塩、水を飲みすぎないようにすることが大切。 |
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心臓の病気 心臓弁膜症 僧帽弁狭窄症 |
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弁が固く固まってしまい、血液が流れにくくなる。弁が悪くなると肺から心臓への血流が悪くなり、肺に血液が溜まってしまいます。また、血液が流れず、よどんで、血の塊ができる。これが原因で血栓ができるので、血液が固まらないくすりを使います。 |
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僧帽弁閉鎖不全症 弁が完全に閉まらず、ポンプとして働かなくなり、血液が流れにくくなる。人工の弁を使います。 |
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金属弁は血液が固まって動かなくなります。血液がかたまりにくいくすりを使い、血液をサラサラにしています。 |
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冠動脈疾患 狭心症 心筋梗塞 心室瘤 |
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冠動脈が75%以上狭窄すると症状が出てきます。一番酸素を必要とするのが心臓で2番目が脳です。 心臓の筋肉が酸素不足になるのが狭心症です。完全に血管が塞がれ筋肉が死ぬのが心筋梗塞です。一度筋肉が壊れると再生しません。同じことが腎臓でも腹部大動脈でも起こります。これらは動脈硬化性の病気であり、これを生活習慣改善で防ぎましょう。 |
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血管が狭くなっているところがあります。カテーテルでバルーンを入れて血管を膨らまします。狭くなった血管が広くなっています。元に戻らないように、ステントを入れます。 血管がだめになっている場合は、別の血管でバイパスを作り血液を送ってやります。 |
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大動脈瘤 大動脈が圧力などで膨らんでこぶができる。破裂すると死亡します。 |
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大動脈解離 石原裕次郎の心臓病。血管が圧力に耐え切れず、血液が漏れてくる。破裂すると死亡する。 生活習慣を改善し、心臓の病気を予防しましょう。 |
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今村 先生に感謝し花束の贈呈。ありがとうございました。 |