たまごビル健康講座                       平成26年10月11日

  クスリとどう付き合うか 忘れ去られた患者の視点

        TIP「正しい治療と薬の情報」編集長
        健康と病いの語りDIPExーJapan理事長
        薬害オンブズパースン副代表

             別府 宏圀 先生




 【たまごビル院長 石垣 邦彦 先生】

別府先生はライフワークとして、患者さんの語りをつたえる活動をされています。EBM(Evidence-based Medicine)患者に最適と思われる、科学的に根拠のある治療を提供すること。そして、NBM(Narrative-based Medicine)患者の言葉をきいて、治療に活かしていこうという考え方。

DIPEx(Database of Individual Patient Experiences)オックスフォードで始まった患者の話を聞き、インターネットで発信して、誰でもが見られるようにする。医療側の視点からだけではなく、患者さん側からの視点で見るということをされています。

 
   先日、東大の鉄門記念館でおこなわれた、クスリの専門家の集まりに招待されました。
そこでの話でも、クスリは良いところも悪いところもありますが特に急性期をすぎた慢性疾患については、クスリはほとんど必要が無いと思われます。それでも、くすりは大量に販売されています。
現在行われている、肺がん検診は、もともと肺結核の検診でした。しかし、肺結核が無くなったので肺がん検診に切り替えたのです。しかし、レントゲンで発見されるような肺がんは、すでに手遅れなのです。しかも、定期的にレントゲンをかけますと放射線の影響でがんが発生するリスクが有ります。このように肺がん検診を行っているところは世界で日本唯一つなのです。そういうこともあることを覚えておいてほしいのです。



【関西医科大学 病理学部教授 四方 伸明 先生】


 内科ではクスリが無いとなにもできないのです。現在の医療では、クスリに頼って治療を行っているのが現状ですが、急性期、感染症、栄養不良の時はクスリが有効ですが、加齢にともなったような慢性疾患にはクスリが必要なのか、効くのかが問題です。間違えばクスリが毒にもなります。

普通、医療の研究などには、多くの業界がスポンサーとなりますが、別府先生は、業界の寄付や援助を受けないで、中立の立場からクスリの有用性あるいは危険性を研究されておられます。

  「正しい治療と薬の情報」編集長をされています。製薬会社からの宣伝を一切のせない雑誌です。しがらみを排し中立の立場で編集されています。また、健康と病いの語りDIPExーJapan理事長、薬害オンブズパースン副代表でもおられます。クスリの事についてお話して頂きます。

 
 【クスリとどう付き合うか 別府 宏圀 先生】

今医療の一番の問題点は、患者さんからの視点が抜けていることではないかと思っています。

ここで最初にクスリの有用性についてお話します。
クスリの有効性を調べる時、同種の動物で同じ状態の物を用意して実験しますが、人間で確かめる時、同じ条件の人間を集める事はできません。そこで、人間ではくじ引きの偶然性や2重目隠し法を使い、暗示効果や先入観を無くして実験します。このようにルールを決めてクスリの有効性を判断しています。
しかし、ルールは作ったけれど、内部でデータを操作する事件がありました。最近では、ディオバンの例があり、クスリの有用性を自社のクスリに持たせる不正があり、信頼性を失っています。現在クスリはそのような状態で作られています。
 
 


副作用は思ったより多く発生しています。
イギリスやアメリカではデータを記録する文化があり副作用の実態が出てきます。
しかし、日本ではデータが記録されず、副作用の実態が出てきません。












 ガスターの副作用を示します。

ガスターテンは優秀なクスリで、そのため、手術する件数が減っています。少々の胃炎や胃潰瘍は治ってしまいます。しかし、良いクスリですが、それでも副作用があります。
場合によっては、入院か命にかかわる副作用が有ります。


○副作用の2面性


 予想できる副作用
   鎮静剤など、血圧を下げる副作用が有るが、少しふらふらするだけです。
 予想できない副作用
   過敏症 アレルギー (いままでなかったけれど、長く続けると出る)

 副作用には気をつける必要がある、クスリを飲んで何か具合が悪い時は、すぐ相談が必要。

○副作用の3倍の法則

  100人に1回出る副作用は、300人以上で無いと分からない。治験者はせいぜい数100人のため、
  副作用は分からない場合がおおく、何年か経ってから出てくることも有ります。
  従って新クスリは少し様子を見る必要があります。

○医師の無理解

  患者の言葉をきちんと聴かず、クレームと勘違いする医師がいる。副作用はクスリの注意書きに小さく
  書いてあり、注意深く読めば分かります。
  副作用の事が分かるのは患者だけです。患者の事を聞く医師が副作用の事を分かるのです。従って
  遠慮なく聞いた方が良いのです。副作用は危険な場合が有ります。

○くすりの2つの課題

  内科の医師はクスリが無ければ何もできません。クスリ頼りです。外科でも手術時にクスリが必要です。
  クスリは患者の命を救います。しかし、クスリはお金儲けにもなります。
      
  儲かるくすりが作られます。儲からないクスリは作られず、必要なクスリも消えていきます。
 今話題のジェネリック医薬品(特許が切れたため、他の製薬会社が同じクスリとして製造しているクスリ)
 は実は同じクスリではありません。メーカーにより少しずつ異なりますが、同じクスリとして売られている
 ため、医師には分かりません。飲んだ患者にしか分からないのです。

 クスリがたくさん売れ、値段が安くなってもうけが少なくなると、クスリも色々と工夫して売られます。
 研究開発などの正当な工夫も有りますが、安易な適応症の拡大などで、重大な副作用を引き起こした事も
 有ります。

   適応症の拡大よる重大な副作用
 
     スモン   外用薬を飲みくすりにした。
     DES    ホルモン剤を適応外に拡大した。アメリカで100万人規模の薬害が発生した。
 


  業界と産・官・学の癒着が問題となっています。
  
巨額の利益が発生する為、都合の悪い情報が隠され、出てこなくなっています。
  
患者・消費者の視点からの監視が必要になっています。






うつ病の治療クスリとして使われているSSRIは、副作用の少ないくすりとされて
広く処方されています。
しかし実際に服用していた患者は副作用に気付きましたが、医師に伝えても
理解されず、そのまま処方され続けていました。

しかし、ネットを通じて患者同士の情報が交換されたところ、多くの患者が
同じ副作用を経験している事が分かり、問題が浮き彫りにされたのです。
テレビでも取り上げられ、見直されました。
そして、18歳以下には投与されない決定がなされました。

その後、製薬会社は、小児には最初から効かないことを知っていたのに、
子供向けにも販売していたことが分かりました。
患者さんが見つけた副作用の例として有名な事件です。
 
大々的に宣伝して行ったHPVワクチンで多くの副作用が出ているが、「気のせい」「大騒ぎする」「思い込み」などとして、葬り去ろうとしました。

しかし、重大な被害が多く発生したため、ワクチン接種の積極的勧奨は中止されましたが、接種は今も行われています。いまだに、多くの女子学生が副作用と認められず、治療法もないままに副作用に苦み続けています。
 


 
 
ワクチンは病気ではない多くの人に接種する為、巨額の利益が発生します。その為、現実を隠して、都合の悪い事は葬り去ろうとしています。

厚生労働省の「子宮頸がんワクチン副反応検討部会」で問題になったのは、改善しつつあるとした「痛み」の研究班だけを残し、
原因追及している「神経」研究班を排除している事です。
自分たちの利益にとって都合の悪い事は、表に出さない姿勢が有ることです。
関係者がはっきりとした事を口に出せないのは、業界との癒着があるからです。
クスリ業界の影響を受けていない医師や官・学が必要なのです。
患者や一般市民が変だと感じる事が大切です。そして全ての情報公開が大切です。

○DIPEx Japan 健康と病の語り

  (筆者注:DIPExは Database of Individual Patient Experiences(個々の患者の体験のデータベース)のことです。
       もともとは、病気になった医師が、患者になって初めて実際に病気になった時の不安や症状を知り、
       医師の時には何も気づいていなかった事を知ることになったのです。
       患者により症状は様々であり、医師からの指示も実際に行ってみると困難な事も有ります。しかし、医師に
       は分かりません。患者同士がいろいろと工夫していることも知ったのです。しかし、医師には伝わって
       いません。そこで、患者が素直に自分の言葉で話すことが必要と考え、患者の声を聞くデータベース作りが
       始まりました。
       患者にとっては、同じ症状の患者の話や、治療の現状や対策を知ることが出来、病気に向き合う勇気
       と知恵が身に着きます。
       医師も患者の思いや治療の情報、患者の悩みなども分かり、治療に役立てる事が出来ます。)

 医師は患者さんの言葉を聞くと、ちゃんとした言葉で書くように指示されています。これは医学用語を使い正確に伝えるためですが、
これは、違う事を伝えたり、必要な物を捨てたりすることにもなります。
患者さんは自分たちの言葉で伝える事が大切です。



実際のDIPExのビデオの紹介がありました。誰でも見る事が出来ますので、ぜひご覧ください。
  http://www.dipex-j.org/

イギリスでは2500人以上の語りが公開され、60以上の項目に上がっています。しかし、日本では未だ
「認知症」「前立腺がん」「乳がん」「大腸ガン検診」しかありません。これからも皆さんの協力が必要です。

【質疑応答】

 (問)病院でクスリが処方された場合にどうすればよいのか。実際にはもらったクスリを全部飲んでいない。
 
 (答)クスリは必要な物ですが、自分に関係が有るものだけにしてほしいと医師に言ってほしい。
    5種類以上は多すぎると思われます。
    多くのクスリを飲むとクスリの相互作用で、副作用が出る場合が有ります。
    医師も、クスリを出さないと何もしないと患者に言われるので、クスリを出している事が有ります。

    慢性疾患や老化に対処するにはクスリ以外にも方法が有ります。クスリだけに頼るのはやめましょう。

 (問)よいクスリとは
  
 (答)国境なき医師団が発展途上国で本当に必要なくすりは10数種類と言っています。
    たくさんのクスリが作られているのは、お金を払ってくれる国で使われるクスリを作っているのです。
    本当に必要なクスリかどうかを見極めましょう。