たまごビル健康講座                       平成26年4月12日
  
   病理医から診た腸の病気
  
     関西医科大学 病理部教授 
       四方 伸明 先生
 

 【たまごビル院長 石垣 邦彦 先生】

ROB療法(内臓調整)では腸を中心に治療しています。
ROB療法は体のしくみを活用して、治療とともに家での養生法を覚えていただいて、慢性疾患の患者さんが主体となった予防をしていく療法です。

現在世界的に求められている医療です。ROB療法がこれからの世界的な慢性疾患の標準になることを目指して、名古屋市立大学・関西医科大学・大阪医大などを中心として共同研究をしています。

今日はその研究の一環として、関西医科大学の四方伸明教授に「病理医から診た腸の病気」という題目でご講演して頂きます。
(解説)
四方先生は、病理医です。病理医とは摘出された細胞・組織を検査し、病気の原因の解明や診断をする医師です。病気のためどのように組織が変化するか研究し、原因究明や治療に役立てています。手術中に採取した組織の良性、悪性などの診断を行う術中病理診断や手術で摘出された組織を調べる手術標本病理診断、亡くなった患者の死因や病因を調べるための病理解剖などを行っています。
 【四方 伸明 教授】

病理の診断は結腸(大腸)の腫瘍性疾患、炎症性疾患がほとんどです。
なぜ小腸の方には大きな病気が無いのに、大腸に大きな病気があるのか、いろいろな仮説があります。本当の原因は分かっていませんが現象としては起こっています。

病理学とは形を診る学問で病理形態学です。病的変形とは病気になった時、形が変わる事です。そこから、病理医が組織の変形を診て病気を診断します。病変は大きく分けて6つに分類されます。


腫瘍
  がん、腫瘍
循環障害 
  出血や梗塞

退行性 
  細胞の不調による変性や委縮
  ・壊死など
  組織細胞がダメージを受けた
  ような変形

炎症
  炎症や、免疫異常

進行性病変 
  再生や順応して変化する化生
  (細胞が変化してしまう)

奇形 
  先天的な形の異常、機能的な
  物も含める

 
 
正常な大腸                        正常な大腸のヒダ
 
   良性のポリープ 表面がつるっとしている         良性のポリープの組織図

ポリープの所だけ細胞が増加している。外部へ増殖・浸潤していないので、良性である。


 がん

 
   結腸のがん                      がん 腸管ががんで詰まり、外部へも増殖している
  
     がんの組織                    がんの組織



アップルコア(リンゴの芯)と呼ばれる結腸がん。がんで腸管が塞がれ狭くなっている。

 
 炎症
 
  微生物が入り込み、炎症が起こっている      日和見菌が増殖して起こった偽膜性大腸炎

炎症は、外部から微生物などが侵入して起こります。しかし、偽膜性大腸炎は違う原因で起こります。
腸内には、善玉菌、悪玉菌、そして、普段は悪い影響がない日和見菌がいます。しかし、抗生物質などを使いすぎると腸内細菌が減少します。腸内の菌のバランスが崩れると、日和見菌が増殖し、腸壁を傷つけ、偽膜を作る偽膜性大腸炎などが起こります。腸内は微妙な菌のバランスにより正常になっているのです。
  
 クローン病 大腸の壁が厚くなり内部がせまくなっている  丸印の部分が狭くなっている

クローン病は細菌が原因の炎症ではありません。原因が分からない炎症の病気です。腸壁が厚くなり内部が狭窄しています。現代医学では原因不明で治療方法もありませんが、ROB療法で回復した例があります。

  
 潰瘍性大腸炎                          潰瘍性大腸炎

 原因不明の難病に潰瘍性大腸炎があります。菌が原因ではなく、腸管に炎症を起こし粘膜がはがれてしまう病気です。潰瘍が広がると粘膜の欠損を起こし鉛管状の腸管になり、吸収がわるくなります。原因は不明です。

 病気の原因

病因としては、菌などの生物的なもの、物理的、化学的なものがあります。
従来は、病原菌が病因と考えられていて、病原菌を無くせば病気が治ると考えられていました。そのため、菌は
取り除けば良いと考えられました。
病原菌は無い方が良いのですが、それでは菌はすべて無ければ良いのでしょうか。以前では菌は出来るだけ除菌
した方が良いと考えられていました。
しかし、それは間違っていた事が分かってきました。 
私たちは腸内の細菌と共同作業で発育し免疫力を高めてきた事が分かってきました。次の実験をご覧ください。
 
  (A)無菌マウスの毛細血管網(緑)   (B)正常な腸内細菌のマウス       (C)腸内細菌を接種した無菌マウス
(A)は無菌マウスです。(B)は正常なマウスです。比較すると無菌マウスの免疫をつかさどる毛細血管網(緑の部分)が発達していません。非常に少ない事が分かります。

しかし、(C)は無菌マウスに腸内細菌を接種した結果です。毛細血管網が増えて正常になっています。腸内細菌がないと、免疫(毛細血管網)が発達しないのです。無菌状態になると免疫がつかない事が分かります。

従来は悪い生物を病気の原因として菌を徹底的に駆除してきました。その為、腸内の菌のバランスを崩し、免疫力がバランスを崩し、免疫が暴走しているのではないかと考えます。

クローン病や、皮膚病、アレルギー、花粉症などは、細菌が起こしている炎症ではありません。病原菌はありません。これらの病の治療に寄生虫を使う療法もあるほどです。有害な寄生虫を入れて免疫を正しく働かせようとしているのです。

また、いらない物と考えられてきた虫垂に、母からもらった腸内細菌の情報を持っている事が分かってきました。この情報を元に腸内細菌のバランスをとり免疫力を元に戻しているのです。

私たちは腸内細菌と共生してきました。病原菌を駆除するため菌を根絶やしにするのは間違っています。
腸内細菌と一緒に共生しているのです。細菌を必要以上に駆除すると免疫が混乱を起こすのではないでしょうか。

外部から悪性菌が入ってきて増殖するのを抑えているのは母親からもらった腸内細菌が小腸・大腸のなかで
バランスを取って共生し悪性菌をおさえているからではないでしょうか。

たまごビルでは便の状態をくわしく問診していますが、便の状態で腸内の細菌の状態を知ることができます。
腸を大切にするにはクスリを使いすぎない事が大切です。腸内細菌をバランスよく育てることが大切なことです。内臓を健康にする事で腸内細菌を活かし、免疫力を付け、健康体に近づけていくことが出来ます。