東日本大震災チャリティたまご会              平成23年9月10日


放射線と生物  
                    関西医科大学 物理学科教室教授師
                                 木原 裕 先生      
 放射線が発見された頃、放射線の怖さを知らなかったため、]線の発見者レントゲンは奥さんの手の
レントゲン写真を撮りましたが、奥さんは、その後手の潰瘍に悩まされる事になりました。ラジウムで有名な
キュリー夫人はガンで死亡しました。 放射線の怖さを知らなかったためです。現在、マスコミで色々な事が
言われていますが、過去のデータに基づき、正確な判断をすることが重要です。過去のデータとは、
広島・長崎で犠牲になった、今なお後遺症に苦しむ方々から得られたデータに基づくものがほとんどです。
最近では、チェルノブイリのデータも使われています。

 放射線とは放射性物質から放射される物で、空気を電離(原子から電子を放出し不安定にする)する
ものです。原子は電離すると激しく反応し、安定な形になろうとし、そのため生体に影響を与えます。


【放射線を知るための基本的な単位】

   Bq(ベクレル)  : 放射線の強さ。1Bq=1秒間に1個の放射線。(要素により量は異なる)。
   Sv(シーベルト) : 吸収線量。放出される全エネルギーを被ばくする者の質量で割ったもの。 
                人への影響を表す放射線の量。 


【確定的影響】
 右の図はミリSv単位です。10Sv被曝すると100%死にます。5Sv被曝すると50%の人が死にます。1Svで脱毛、紅斑、不妊などが起こります。500mSv以下では症状は起こりません。

【確率的影響】

 放射線があたると何らかの影響がでます。広島・長崎の被曝者に系統的追跡調査の結果、100mSv以上被曝した場合、固形がんの発生率が被曝量に比例して増えます。1mSv被曝すると10万人に5人ががんになる可能性があります。たとえば100mSv被曝した場合、1000人に1人が、がんになる可能性が有ります。最近では5人に1人が、がんで亡くなっていますので、確率的には、あまり影響が無いといえます。
 国際放射線防護委員会(ICRP)基準(放射線を浴びても安全とされる基準)
     平時 1mSv/年   放射線を使用する職業の人 50mSv/年以下かつ100mSv/5年     
    緊急時 20mSv〜100mSv 放射線を使用する職業の人 100mSv〜500mSv
        (緊急時日本の基準  20mSv 放射線を使用する職業の人 250mSv)

下の図は福島第一原子力発電所周辺のモニタリング結果です。

          単位はマイクロSv(ミリの1000分の1)です。



 初期にはヨウ素(甲状腺がんを引き起こす)が問題になりましたが、半減期(放射線が半分になる時間)が8日と短いので、今ではほとんど影響はありません。
セシウムは半減期が30年と長いですが、食べて体内に入っても80〜100日で排出されますので、あまり問題がないと思われます。原子炉から離れている場所では、除染作業を行えば、問題がなくなると思われます。
 右図は屋内退避および避難などに関する指標です。単位はミリSvです。上図の福島周辺の単位はマイクロSvでミリの1000分の1ですから、現在では問題が無いことが分かります。また、空気中に存在する放射性物質は検出されていませんので、実は、マスクや長袖の服装も必要ありません。


   この様な低線量被曝の場合、回復作用が有ると考えられます。従って一瞬に大量の被曝が有る場合と比べ、
影響は少なくなると思われます。
食物の摂取制限基準で例えばホウレンソウでは1sあたり200Bq以下となります。これは毎日1sのホウレンソウ
を1年間食べ続けたときに、体内に残る放射線量が10mSv/年になる基準です。したがって1日や2日の間、
基準値以上のものを食べても問題ありません。むしろ、放射能を気にし過ぎてのストレスの方が悪影響が
有ると考えられます。

最後に、放射線の問題は、測定可能であるため、その影響も良く調べられています。従って必要以上に恐れない事
が放射線に接する場合の原則です。正しく怖がる事が大切という事です。